俺は悠二!
高校一年生で好きなものは等速直線運動! 嫌いなものは煎餅!
好きでも嫌いでもないものは消しゴムだよ!
四月末――曇り空の下で坂井悠二は目覚めた。というより、オカンに起こされた。
悠二は予定が特にあるわけではないが、すぐさま時刻を確認したくなった。
鈍い動作でデジタル時計に目をやる。
十時十二分。
完全に遅刻の時間であった。
悠二の脳は睡眠を欲していたのだが、彼の意に反し、「オカン」はそうはいかなかった。
「あんた、朝飯食べやー!」
オカンの少し強い印象の口調。
悠二は従った。居間のテーブルで朝飯を喰らう。
「微、微妙……」
心の叫びであった。
箸を置く。
一応全て食べ終わり、悠二は睡眠という安息を得たかに思えた。
朝飯を食うことに全神経を集中させていた悠二は周りの変化、もとい慌ただしさに気が付いた。
それはまさに、ナッパの爆発波であった。
学校に行かないとヤヴェな。
そして適当に通学し、適当に授業を受け、その学校の帰り道。
彼は非日常に出くわした。
なんかへんなのがいるからだ。
マヨネーズのマスコットキャラそっくりな三等身の人形が首だけを回し、言う。
「んー? なんだこいつ」
そのとき悠二は考えていた。
ケツ毛のある意味を。
「ミステスやん。とびっきり変なやつやね」
ビジュアル的に受け付けないヤツがなんか言った。
悠二はそこで初めてこいつらの存在に気付いたが、帰ってミルクココアが飲みたいようだ。
「やったあ、僕たちお手柄だあ!」
マヨネーズのマスコットキャラそっくりな三等身の人形がズシンとか言いながら踏み出した。
悠二は帰ってからの予定を組んでいた。
パソコンでエロCGサイトの発掘に没頭しようと……。
「じゃ、さっそく」
なんかマヨネーズのマスコットキャラそっくりな三等身の人形が悠二を掴んだ。
悠二はその笑みを見て思い出した。
福沢諭吉の妖しい笑み……一万円札が机の引き出しにしまってあったことを。
悠二はそれに呼応し、ともに笑い、自他の繁栄を願った。
(一万円でエロゲを買ってやるぜ……!)
かくして悠二の欲望は幕をあけたのである。
彼のオデコはこれからも光り続けるであろう。
ピカピカ、ピカピカ、と……。
それはもう神々しく……。
気付いたらマヨネーズのマスコ(ry が口をパカッと開けて調子にのっている。
どうやら悠二を食べるっぽい。
「いただきまーす」
なんかへんなんの拳が俺の肝臓(レバー)で弾けようとしたとき。
それは舞い降りた。
敵Aの拳が横に断たれた。
「ちょwww」
悠二はたぶん本気で爆笑した。
そこに髪の毛赤色の女の子が現れた。
「おまえ、大丈夫?」
悠二はまだ爆笑している。
「おまえが大丈夫?wwwwww」
「危ないから下がってて!」
「うはwww温度差感じろよwwwww」
「うわぁ、なんか私の中の使命感がセピア色に脱色してきたよー。そっちも空気読もうよ人間」
悠二はまぶたを裂かんとばかりに目を剥き、少女を指さしながら爆笑している。
「黙りなさい、馬鹿」
ドスをきかせて少女は言う。
「うるせえ死ね」
「しね言うたほうがしね」
「下がれ下郎」
そこで敵A。
「無視っすか?」
「黙れよ」
「すいません」
「うぜぇな」
「すいません殴らないで」
「ちょwww」
「すいません生まれてきてすいません」
髪の毛赤色の子と悠二は時間の許す限り殴り続けた。
殴り合ったあと、髪の毛赤色の少女は敵Aとかいろいろを破壊し、悠二に向かって言う。
「おまえは人じゃない。物よ」
「嘘ぉ」
「本物の『人間だったおまえ』は、“紅世の徒”に存在を喰われて、とっくに消えている」
「おおそうか。スゴイなオマエ!!! で、何だっけ?」
「おまえは物なのですよ」
「縛るぞガキが」
「すいません」
糸冬