第一章 | 日常 |
「おい、リュウ 何ボーッとしてんだよ」
横に座る小松が声をかける。
「ん?ちょっと考え事」
小さい声で返す。すると小松があきれた声で言う。
「考え事してもいいけど〜テストするってよ」
横から回された用紙を自分に回す。
「ここは塾なんだから勉強しろよ」
少し微笑み、皮肉そうに言ってやる。
「うるせ−よ」
(テスト・・・か、メンドくせぇよなぁ・・・)
俺は塾にいるが、勉強する気はサラサラ無い。昔はあったのだが・・・。
(名前は、ええと“鉄 龍”(くろがね りゅう)、っと)
名前を書き、テストをはじめる。
自分は小さい頃から運動は得意だった。
友達から聞いた話では結構自分は顔はよく、
モテてるという話だが、そういうのは興味がない。
とにかく普通の人間で、普通の日常を過ごしていた。
少なくとも・・・これまでは・・・・・・・・・・。
「お前ってさ、何で塾に来てんの?」
塾の帰り道に小松が聞いてくる。
「ん?なんつーの・・・なりゆき・・・かな?」
小松はいい奴なんだが、ちょっとお節介焼きだ。
下の名前は、・・・ええと、“弘明”(ひろあき)・・・だったか。
「・・・小松さぁ・・・」
何だ?という声がかえってきた。
「お前って頭よくていいよな」
「はぁ?そんなことかよ」
小松が気が抜けた声をだして返した。そしてまた続けて言う。
「リュウは素では頭いい方じゃないか、それにそんなこと気にするなら最初っから努力しろ」
この言葉に自分は情けないことで言う。
「でもよ〜・・・」
「でもじゃねえよ。高校入試終わったからって浮かれるなよ。中学みたいに3年なんてはえーぜ?」
そんな会話を続けるうちに別れ道が来る。
そして2人は軽い挨拶をしてそれぞれ別に道を行く。
それらすべてのことは、いつも繰り返した日常だった。
だからこれからも、こんなことを繰り返していくはずだったのだが・・・。
だが日常は今、崩れ去ろうとしていた・・・それは、新しい日常の始まりでもあった。
・・・その内容は・・・どうであれ・・・・・。
『ターゲット、“鉄 龍”確認、これよりミッションにうつる・・・。』