第二章 | 初まりと終わり |
「最近暑くなってきたな・・・」
とりあえず独り言を言ってみる。日はとっくに沈んでいる。
今は6月の終わり頃、つまり梅雨をそろそろぬける頃だ。
湿気だらけでじめじめしておまけに暑いとくれば、この時期を好きな人間は少ないだろう。
自分もこの時期は気分がブルーになる。
そして、運が悪いことに、
「うわっ降って来やがった」
急に空が泣き出し、被害を最小限にくいとめるため、自分は走り出した。
「傘持ってねぇよ・・・ったく」
少しキレ気味になってきた。だがこの感情は一瞬にして消し飛んだ。
急な出来事に、走る足をとめる。
「なんだ・・・これ・・・・・」
前の景色が歪んだ。反射的に周りを見渡すが同様に歪んでいる。
目をこするが変わらない。再度こすってみる・・・変わらない。すると、
歪んだ景色から黒い影見えてきてゆっくりとこちらに向かってくる。
目をこらして見てみる。
「あれは・・・」
黒い影が歪みをぬけて通常なら見えるところまで来た。
だが暗くてまだ見えない。街灯が照らす場所までこなければわからない。
でもその異変はすぐに気がついた。
「大き・・・い?」
3メートルほどの身長だ。大きすぎる。
斧らしきものを持ち、引きずりながら歩み寄ってくる。
「ひ・・・うあ・・・」
恐怖で声が出ない。
思考回路がストップし、何もできないでいる。
いつの間にか、周りに沢山の怪物が集まっている。
斧がとどく位置まで来て、それはゆっくりと斧を振り上げる。
(だめだ、夢ならさめろ)
眼をつむり、最期の時を待つ。
もう終わった、そう思った・・・。
「1人の人間に対してここまでするんですか・・・?」
あきれた声が聞こえたその後、ドン、と歪んだ空間内に爆音が轟いた。
―銃声?
驚き目を開くと怪物が左に大きく傾いていた。
銃声が3回ほど連続して轟くと同時に、怪物が吹き飛んでいく。
素速く音源を確かめると、漆黒の衣をまとう何者かが2丁の銃をかまえていた。
「そこにいると危ないですよ。」
自分に言ったのだろうか、しかし考える暇はなかった。
風を切る音がし、一瞬にして怪物は2つに断ち切られた。
と同時に左右の敵に向けて発砲し、片方の敵の方向に跳躍して、弾丸の雨を降らせ、
そしてそれを踏み台にし、再び跳躍して、もう一方に剣を振り下ろした。
「なあ!?」
突然のことに自分は驚きの声を上げた。
そして巧みな剣さばきで1体を吹き飛ばし、
さらに1体を横になぎ倒して最期の敵に剣を突き刺した。
「やはり・・・この程度・・・か」
剣をぬくと、怪物は雨に溶けるように消えていった。
そこまで見ると自分は意識を失っていた。
「んはぁ!?・・・ん、あれ?ここは」
いつのまにか自分の寝室に戻っている。
「夢だったのか・・・」
母がいるであろう下の階に行く。時刻は9時をまわっていた。
「夢にしてはリアルだなあ」
安堵からのため息を出してリビングに入る。
「母さん俺、ん?その人誰だ?」
そこには見知らぬ女の子が母と向き合いコーヒーを飲んでいた。
「倒れていたあなたを運んできてくれたのよ〜」
母が言った。・・・あれ、ストーブの前に黒いコートが・・・、
「当然の行為です。」
ありゃ?この声は・・・・・・・・・・。え・・・・・?