第三章 思考と再会

気がつくと朝になっていた。

昨日は疲れからかベッドに寝ころぶと3秒ほどで眠りについた。

あの女の子も、自分があのことを聞いても名前しか言わなかった。

(“レイナ”だったっけか?)

心の中で名前を言ってみる。言ってみるだけだったが。

やっぱりあのことは夢で、レイナと名乗った少女が助けてくれたのか、と考える。

(でもあの後俺をどうやって家に?)

無理だ、あの少女が俺をどう運んだというんだ、と想いながら時計を見る。

「あっ、ヤベ!」

時刻は7時半をまわっていた。



いつもより少し遅めに家を出たが、学校には十分間に合う。

いつもと同じ徒歩で目的地へ向かう。

(学校に近いって結構い―――)

「よ!リュウ、元気!!」

ズドン、と後ろからたぶん思いっきり押された。ていうか突かれて吹っ飛んだ。

かろうじで前に倒れないようにすることが出来た。

「なっ!?ビックリするだろ!西本か!?ていうか痛てぇよ!!」

驚いて裏声混じりに怒鳴った。

道を歩いていた人全員がこっちを見たほど朝の空気に響いた。

そして西本がわざとらしく感嘆の声を出す。

「この西本勇介様の一撃をたえるとは、さすが俺と幼なじみだけあるな!」

「関係ないけどな・・・」

すかさずつっこんでやると西本はナハハとわざとらしく笑った。

少しさっきの突きの痛みを混ぜたような声で西本に言う。

「本当に、お前の力は強いんだから、手加減しろって」

西本は運動に関しては自分と同じくらいの成績だが、体格が全く違う。

自分と比べ筋力が段違いで身長も自分より高い。

西本はまたわざとらしくナハハと笑った。



「よし、ついたぞ!!」

学校について西本が人々の好奇の視線を気にせずに、大きな声で言った。

「朝からテンションたけぇよ・・・」

「ああ!?何か文句あるのか」

「なんだよ、急に!?」

たまにこいつがわからなくなる。

こんな会話を続けるうちに教室に着いていた。

西本が、

(あっ俺ちょっと用事があるんだった)

と、ほかのクラスに行った後、誰かに声をかけられた。

「リュウ、おっはよー!」

「よう、マサルか」

かるくマサルと挨拶を交わす。

「聞いて聞いて!昨日ボク自転車で三回転して、頭から電柱にぶつけたんだ〜」

マサルこと、吉田 勝はまぁようするに天然だ。これ以上でもこれ以下でもないだろう。

少しばかり女子に人気があるようだ。



椅子を後ろに少し倒してバランスをとる体制で考え事をするのが自分では普通だ。

先生が来たことに気づいても直すことはない。

(昨日の女の子は何だったんだろう)

自分のすべてを飲み込もうとした恐怖と、そして華麗な剣さばきでそれらすべてを切り裂いた漆黒の影を思い出す。

(やっぱり・・・あの子が・・・)

声もたぶん同じであったし、喋り方も、体格も同じくらいだった。

でもさすがにあのようなことはありえない。

自分の夢と思うのが一番いいと思う。

(あのレイナって子、今どこで何を・・・)

考え事をしていると、きくでもなくきいていた先生の話が聞こえた。

「今日から中途入学することになった、水島 零奈(れいな)さんだ」

先生が仲良くするように、と行ったと同時に椅子の定を滑らせて後ろの机の角を思いっきりぶつけた。そして

「ぐぉおおおぉぉぉおぉおぉぉぉぉ・・・」

悶絶した。

「大丈夫か?鉄、そうだな鉄の後ろがあいてるな。あそこの席に座りなさい」



「な、何でここに!?」

今、帰りの途中で彼女に聞く。

休み時間はいろいろと忙しく聞く機会がなかった。

「あなたを護るためです。」

「じゃあ、やっぱりあのときの人は・・・」

彼女が簡潔に答える。

「そう、私です」

「な、何で俺が護られなくちゃいけないんだ」

「それは知らない方がいいでしょう。勝手に私に護られてください」

冷たく言い放つ。

「なんだよもう・・・・・」



「オイオイ、マジかよ〜」

西本が言う。

西本と小松とマサルが二人の後を追っている。

「今日来たばっかりの女の子と帰るとは、やるな」

再び西本が言う。

その後に続く、こういうことに関しては興味のない小松が言う。

「かえって勉強したいんだけど・・・」

「お前、親友が女の子を連れてんだぞ。最期まで見届けなければ・・・」

「そっとしておいたほうが・・・」

小松の声を遮ってマサルが言う。

「二人とも向こうに行っちゃったよ」

時はすでに遅く、レイナが三人の気配に気づいて逃げた後だった。

「ナニィぃっ!!」

西本の声だけがむなしく響いていた。



自分の家の前で女の子に言う。

「あの、レイナ、さん?」

「コードネームがゼロなので、こっちで呼んで頂けませんか?」

「あ、ああ、レ、じゃない、ゼロ」

「はい?」

首を傾げ彼女が聞いてくる。

「ありがとう」

「えっ?」

突然の感謝の言葉にとまどい、動揺まじりに言う。

「いえ、仕事なので、では」

別れの言葉を聞いて一つ疑問を問う。

「そういえばどこに帰ってんだ」

「屋根」

「えっ!?」

「では」

「ではっておい!」

人間ではあり得ない跳躍で自分の家にとびのった。

「マジかよ・・・」