第四章 始動

「フン、やはり下級のものはやられたか」

広く大きい部屋に低い声が響き渡った。

そして、おそらく身分の低いものであろう男が答える。

「思った通り護衛のために使いが送られたようです」

「そろそろこちらも動くとするか・・・」

「それでは“風刃”のセーテスが・・・」

セーテスと名乗るものの声を誰かが遮る。

「いや、ここは俺に殺らせてほしいな、いいだろ?じーさん」

「ギル!なんて言葉を!!」

言葉遣いで怒るセーテスを無視してギルと呼ばれたものが言う。

「興味がわいたんだよ、俺に行かせろ、ボルテメウス!!」

ボルテメウスが口を開く。

「フフフ、“氷刃”ギルが興味を持つか・・・わかった、行ってこい。」



「朝、か・・・」

いつも通りの時間に起きる。

そして、深呼吸して朝の空気を胸一杯に吸い込む。

「なんか、この前のことがウソみたいだな・・・、あの化け物も、今となっては本当に起こったことかもわからない」

問いと聞こえない問いを自分で答える。

「人間って、そんなもんか」



「じゃあ行ってきます」

そういって家を出ると何か軽いものが落ちた音がした。

「んっ?レ、じゃないゼロか」

屋根から降りてきたようだ。薄いライトブルーのセミロングヘアーが綺麗に揺れた。

「おはようございます」

鞄を持ち直しながらゼロが言った。

「んっオハヨ、ていうか何で降りてきたんだ?」

「いや、学校に登校しているところを誰かに見られてもおかしくはないでしょう」

歩きながら会話をする。

「だけど、誤解を・・・」

「誤解?」

「いや、何でもない」



なんだかんだ言っているうちに教室についた。

と同時に西本が満面の笑みをうかべながら近づいてきた。

「女の子と一緒に登校ね〜。うらやましいかぎりだな〜」

俺の腹を殴りながら西本が言った。

「ちがっ、そんなんじゃねえよ」

「じゃあ何なんだ!?」

「いや、ちょっと」

といいながらゼロの方を見ると、ちゃっかり自分の席についていた。

「俺と、ええと水島さんは学校に来る前に何回か会ったことが・・・」

「十分そんなんじゃねえか!このっこのっ」

俺の腕をかためながら西本が言った。

「イテテテテ、痛いって、イダダダダダダッ!」



「何か今日も平和に終わったな」

にこやかに隣を歩く少女に言った。

「普通の一日だったし、もう大丈夫なんじゃ・・・」

「まだ、今日は終わっていません」

自分の声を遮り隣を歩く少女が言った。

「そう、まだ・・・・」

そのときゼロは気付いていたのかもしれない。

どこからか来る気配に・・・



そして、そのとき歯車が回り出す。

すべてのはじまりから、時は流れて、そしてついに、そのときが来る。

まるで先にシナリオを書かれていたかのように。