第五章 | 襲撃 |
それはいつもとなんの変わりのない帰り道だった。
(今日の夕食なんだろうな・・・)
そんなのんきなことを思いながら、こんなことを思えた自分に驚く。
(もうちょっと危機意識を持った方がいいのかな)
そうだ、自分の暮らしをしていたあの場所は二歩分先に歩いている少女によって崩されたんだ。
(でも・・・)
いつ変な怪物に襲われるかもしれない、けど。
(こんな自分は嫌い、じゃないな)
でもこの思いは余裕ではなく、油断だった。
「チッ・・・」
前を無言で歩いていた少女が歩きを止めた。
疑問に思い、聞く。
「どうしたんだ、ゼロ?」
言い終わった瞬間に自分は異変に気がついた。
「なんだ!!・・・」
いつのまにか、ゼロと自分をのぞいたすべての物が凍り付いていた。
「これは!・・・」
誰に聞くでもなく、問う。
それに答えではない声が返る。
「来た」
少年がいつの間にかそこに立っていた。
「俺は氷刃<Mルだ」
少年が言う。
そして、不敵な笑みを浮かべる。
「さあ・・・」
瞬間、ゼロが自分に叫んだ。
「下がって!!」
「始めようかッ!」
少年は言い終わると半秒もたたず、氷の剣をゼロに振り下ろした。
「クッ!」
斬撃一閃、ズドンという思い音が響いた。
その影響でゼロは指一本ほどの間でさける。
「ハッ!反応いいな。さすがだ」
言いながらゼロに斬撃を浴びせる。
三四発、斬撃をゼロは自分の大剣で受ける。
この場所一帯に金属音が連続して鳴り響いた。
「オラ!オラ!オラァ!!」
少年はゼロに反撃のすきを与えない。
「これでも、喰らえッ!!」
かんぱつを入れず、少年は蹴りを放った。
斬撃の方に気を取られていたせいでゼロはその蹴りをまともにくらった。
「ウッ!」
ゼロは数十メートルほど吹き飛び、今や氷の塊となった民家に突っ込んだ。
「ゼロッ!!」
叫ぶ声をよそに少年が言う。
「この程度か?つまらねぇな」
言い終わると少年は自分の方にゆっくりと歩み寄ってくる。
「そろそろ、テメェを殺して帰るとするか」
「なっ・・・」
あくまで奴等の目的は自分を殺すことだと言うことを思い出す。
後ろに下がろうと足を動かすが、動かない。
そうしているうちに少年は一歩一歩近づいてくる。
(足が、動かない・・・)
腰が抜け、後ろに倒れ込んだ。
(だめだ、死ぬ・・・)
もう少年は剣の届く所まで来ている。
そして冷たく言い放つ。
「じゃあな」
(死ぬ・・・死ぬ・・・)
少年は剣を振り上げる。
「死ね」
肉眼では見えないほどの速度を持った斬撃が自分に振り下ろされる。