第七章 | 知るための代価 |
「フゥ…」
朝だ。
氷刃ギルと死闘を繰り広げた昨日。
よく生きているもんだ、と実感する。
…でもどっちかって言うと空を飛んだほうが疲れた気が……
と、考えてると、自分の部屋のドアが開き、母さんが入ってきた。
「リュウちゃん、お友だちよ」
「おう」
短く返した。
誰だこんな早くに、ゼロか?
あいつ常識知らずだし、一理あるな。
勝手に誰か想像していると、玄関前に着いていた。
そこに待っていたのは、三バカ、もとい西本、マサル、小松の三人だった。
常識知らずはこいつらか…。
「オイッス!!元気!?元気!?」
西本が間髪いれずに言った、ていうか叫んだ。
「だぁ〜!!うるせぇ!!静かにしゃべれ!!」
西本に合わせてこっちも大きい声になってることは知らなかった。
横で、眠たそうにしているマサルがうっとりしながら言った。
「リュウの母さんって綺麗だよねぇ、若いし」
ったく、コイツはなんで突然こんなことを言い出すんだ?
と考えながら返す。
「そうか?そうでもないと思うけど」
小松が便乗して言い出す。
「おしとやかで、いい母親だよなぁ」
「そうでもないって、てゆうか何で来たんだ?」
何か会話がおかしくなってきたので即座に話を変え、聞くと西本が答えた。
「せっかくの休日だし、皆で勉強会でもしようかなっと思ってよ!」
と、右手にもったバッグをかざしてみせる。
それに小松が言う。
「宿題残ってるからって、こんな朝から僕らを巻き込まないでほしいんだけどね」
「うるせぇ」
「痛い!!」
そういうことで朝っぱらから勉強会が始まった。
昼も近づき、勉強会も終盤を迎えた時。
「…もう疲れた……」
西本がぐったりしながら言った。
マサルは隣で寝ている…。
「そうだな、暑いし…」
7月に入るとさすがに暑い。
太陽がジリジリと部屋の中を照らす。
小松が汗を拭きながら言った。
「…クーラー無いの……?」
「あったらすでにつけてるだろ…」
そこまで言ったところで部屋のドアが急に開いた。
「すいません、買出しに行ってて、あれ?お客さんですか?」
ゼロだ。グッドタイミングだよ、ったく。
思った通り西本が叫んだ。
「ん何ィィ!!」
自分も叫んだ。
「やかましいィ!!」
ゼロが怪訝な表情を浮かべた。
小松が勘違いして、そう勘違いだ、そして言った。
「…邪魔しちゃ悪い、帰ろう西本」
「ちがッ、そうじゃなくて…」
誤解を解こうとして言ったが無視された。
小松がマサルを起こしながら言った。
「ほら行こう西本」
「しかし……ムムウ…」
とりあえずあいつらにはあとで誤解を解かなくては…。
下の階へ降りて行き、おじゃましました〜、と言う声が聞こえた。
「…買出しってどう言うことだ?」
「龍さんのお側でいなくてはならないんですが、お腹がすいては戦闘はできませんよ」
自信満々に言うことではないと思うんだけど…。
「…話に来たんだろ、本当のことを……」
「そうです」
と言いながらゼロは袋からコンビニのおにぎりとお茶のペットボトルを取り出す。
ペットボトルのふたを開け、飲んだあとに言った。
「…あなたの父は偉大な方でした」
「父…さん?たしか俺の父さんは事故で死んだはずじゃあ…」
おにぎりの包みを開け、一口食べてゼロが言う。
「んむ…あなたが生まれる前に死んだとされていますが、本当は戦死されています」
「そうなのか…」
「彼は私達が向こうの世界で対峙している敵、”リボルト”たちと…」
ゼロの声をさえぎり聞く。
「リボルト?」
「ああ、言ってませんでしたね」
三口目を口に入れながら言う。
「あむ……私達が戦っている組織と敵たちの総称です」
「へぇ…」
お茶を飲みながらゼロが言う。
「奴らリボルトたちには一人一人不思議な力を持っています」
「それが氷とかか?」
昨日戦った敵を思い出し言った。
「そうです。しかし奴らに作り出された”フィアーズ”は能力を保持していません」
「フィアーズ…、最初に俺を襲った化け物か」
「ほうなりまふ」
ゼロは最後の一口をほおばりながら言った。
緊張感ねえなぁと思いながら聞く。
「じゃあ俺の父さんはどう言う関係があるんだ」
ゼロは二個目のおにぎりをあけながら言った。
「んむ……あなたの父は私が所属する組織、バウブレイドを創設した方なのです」
「バウ、ブレイド……」
「そう、リボルトたちに歯向かうために」
おにぎりをもう一口食べて言った。
「…そして、あなたの父はリボルトの幹部でもありました」
「え?」
「彼は人間ではなく、奴らと同じ不思議な力を所持していました」
お茶を口に含みながらまたゼロが言う。
「だから最初はリボルトたちと一緒に反逆しましたが、自分がやってることは間違っていると思いになってバウブレイドを創設したのです」
「…でも、それじゃあ俺は人間じゃねえってのか?」
「半分リボルトの血が流れているでしょう」
その言葉に簡単に返す。
「そうか」
これに怪訝な表情をゼロは浮かべた。
「?」
首をかきながら聞く。
「どうした?ゼロ」
「いえ、人間じゃないってことを知って普通にいられるのはすごいと思いまして」
「そうか?まあ、そのこと聞いても実感わかねえしなぁ」
と、言いながら頭をかく。
「ふふ、おかしい方ですね」
「何が?」
「いえ、なにも」
ゼロがおにぎりの包みなどを袋に入れて片付けながら言った。
「私は人間なのですけどね…」
「そうなのか?」
少し暗い表情を浮かべてゼロが言った。
「私の家族はリボルトにより偶然殺されて、赤ちゃんだった私を拾ってくれてのが私の師です」
「なんか…わりぃこと聞いたな……」
いいえ、とゼロが首をふり微笑んだ。
その微笑はなんだか哀しい笑顔だった。
……不意に頭の中に疑問が浮かんだ。
そういや、と置いてそのことを聞こうとしたが。
「母さんはそのこと知って――――
そこまで言ったところで下の階から爆音が轟いた。
「なんだッ!!」